初 瀬 も の が た り
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「なむさまんだあ、とうえんぎゃあ、ぎゃあてぎゃてえ、はらそう
ぎゃてえ・・」 ’
長いお経を上げ終えた陰陽師が、集まった村の代表に言いました。
「ずいぶん強い霊がたまっている。霊に捧げものをせねばならん」
村人たちは驚いて尋ねました。 ’
「さ・ささげものとは何ですか?」 ’
「人柱を立てねばならん、さもなくば水路は出来上がらんだろう」
と、陰陽師が静かに言いました。 ’
では、その人柱に、誰になってもらうのか!?
村人は何日も考えましたが、思い浮かびません。最後に陰陽師と庄
屋さんが相談して、 ’
「縦じまの着物に横じまの伏せ布を当てて着ちょる子がおったら、
そん子になっちもらおう」と決めてしまったのです。 ’
たいへんなことになりました。 ’