笑うキツネ
陣屋の村を朴木方面に登って行くと茅場(かやば)に出る。昔ここは、'
暗いさびしいところじゃった。 ''
茅場と埴坪(はねつぼ)との分かれ道を、夜遅く向原から帰りよった猟'
師が、急に「ワッハッハ、ワッハッハ」と大声で笑う声を聞いたんじゃ。'
何せ夜中のことじゃけん、たまがっちしもうた。 '
「今頃誰じゃろうかのう、若い者(もん)でん騒ぎよるんじゃろう」と'
近づいていくと、その声はすこし遠くなり、又近づいていくと又少し遠く'
なっていく。 '
笑いあうような「ワッハッ ハ、ワッハッハ」と'いう声 じゃった。 ' 気味が悪いんで、なんと か近づいて声の主を確かめ ようとしたが、近づくと遠 ざかるんで、確かめること がでけん。 ' 猟師が追うのをやめて家 に帰ろうとすると、今度は その笑い声が追いか'けて来 て、すぐ近くでバカにした ように「ウワハッハ」「ウ ワハッハ」と笑んじゃ。 まったく、癪にさわっち ならん。猟師は、笑い声を 本気で追いかけることにし たんじゃ。 |